研究概要と研究室のミッション
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周波数30 GHz以上(波長10 mm以下)の高周波の電波領域は、ミリ波・サブミリ波・テラヘルツ波と呼ばれますが、特に周波数100 GHzから10 THz(波長3 mmから30 µm)にかけての領域は、電子デバイス(エレクトロニクス)技術で扱う電波と光学素子(フォトニクス)技術で扱う赤外線の境界領域にあたり、発振・伝送・検出・増幅といった基礎技術が未開拓なため、「テラヘルツ・ギャップ」とも呼ばれる"電磁波最後のフロンティア"です。 一方で、宇宙/地球研究のような先端科学領域では、分子や原子の回転遷移スペクトルの多くがこの周波数帯に存在することや、地球大気が放射する長波長成分エネルギーの半分以上がこの周波数帯を占めることなどから、古くから重要な領域として注目・利用されてきました。実際、現在世界最先端の大型電波望遠鏡であるALMA干渉計(南米チリで稼働中)では950 GHzの受信機、NASAの地球観測衛星Aura-MLSでは2.5 THzの検出装置などが既に使われていて、多くの成果を挙げています。 本研究室では、「テラヘルツ波を科学する・テラヘルツ波で科学する」をテーマとし、「テラヘルツ波」をキーワードに宇宙科学・地球科学の観測的研究はもとより、私たちの生活とも密接に関係する環境学/環境問題解決や電波工学/新デバイス開発への応用・展開を図っていきます。 |
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本研究室が最も力を入れているのは、「宇宙電波天文学」分野の科学研究・技術研究です。地上設置型の宇宙電波望遠鏡を自らの手で開発し、それを使って宇宙の謎に挑む観測的研究を実施します(それに関連する、あるいはそこから波及する分野の研究課題へのチャレンジも大歓迎です)。 とはいえ、配属を希望する学生さんは、これまで「星を見るのが好き」とか「宇宙に関する知識が沢山ある」というようなことは重要ではありません。もちろん研究対象が"好き"であること、"興味を持っている"ことはとても重要ではありますが、「趣味で見る星空」と「宇宙科学の研究」は、実際のところ全く違います。 さらに本研究室のミッションとして一番重要なことは、宇宙研究で大きな成果を出すことよりも、ここでの研究活動を通じて「次世代に活躍できる "研究者" を育て社会に送り出すこと」だと考えています。将来何処に行ったとしても(大多数の学生さんは宇宙とは関係ない進路に進んで行くと思いますが)、自らの力できちんとした「研究」ができるように、研究プロセスや研究倫理を理解し、研究遂行に必要なスキル(課題を設定し、解決する道筋を考え、実験・解析等を実施し、そしてドキュメントやプレゼンテーションとして成果を外部に伝えられる能力)を身につけることを目指します。 |
現在進行中の研究課題および参画プロジェクト

ミリ波・サブミリ波帯超伝導ミクサの開発
宇宙からの微弱な電波の検出器となるジョセフソン接合(SIS接合)を用いた高感度・広帯域・広ダイナミックレンジのミキシングデバイスを開発しています。
*本研究成果の投稿論文
*学会発表(2021年日本天文学会秋季年会)
*学会発表(2018年日本天文学会春季年会)

ミリ波・サブミリ波帯導波管機能回路の開発
導波管を用いたフィルタ、偏波分離器、ハイブリッドカプラ、マルチプレクサなどの機能回路を開発しています。
*本研究成果の投稿論文
*本研究成果の投稿論文
*学会発表(2020年日本天文学会春季年会)
*学会発表(2018年電子情報通信学会総合大会)

電波望遠鏡受信機システムの開発と運用
これまでに40GHz帯から345GHz帯まで計13台の受信機システムの開発に携わり、国立天文台や大学が運用する様々な電波望遠鏡や大気ラジオメータへの搭載と、立ち上げ・運用を行っています。
*本研究成果の投稿論文
*本研究成果の和文記事
*本研究成果の和文記事
*大阪公立大学1.85望遠鏡のホームページ
*ASTE(アステ)望遠鏡のホームページ
*NANTEN2サブミリ波望遠鏡のホームページ
*科学研究費助成事業データベース

テラヘルツ波帯における超伝導導波管の実用化に向けた研究
超伝導体を材料に用いた「超伝導導波管」を開発し、特にテラヘルツ波帯の伝送損失を低減させる研究を行っています(科研費・挑戦的研究(開拓)により実施)。
*本研究成果の投稿論文
*本研究成果のプレスリリース
*科学研究費助成事業データベース
*科学研究費助成事業データベース

大規模ヘテロダインマルチビーム受信機の開発
ミリ波・サブミリ波帯で100-1000ピクセルクラスのヘテロダインアレイ受信機の実現に向けて、集積型超伝導平面回路素子の開発などに取り組んでいます。
*本研究成果の投稿論文
*学会発表(2024年日本天文学会秋季年会)

ミリ波帯周波数可変バンドパスフィルタの開発
ミリ波帯で、中心周波数と通過帯域幅が任意に変えられる導波管型の可変バンドパスフィルタを開発しています(特許出願中)。
*学会発表(2023年電子情報通信学会総合大会)
*学会発表(2023年日本天文学会秋季年会)

活動的な銀河の熱源診断プローブの研究
超巨大ブラックホールを中心に擁する活動銀河核(AGN)や爆発的星形成(スターバースト)銀河核などの極端に高い活動性を持つ銀河の化学組成や物理状態の関係をALMA望遠鏡などを用いて観測的に調べています。
*本研究成果の投稿論文
*本研究成果の投稿論文
*本研究成果のプレスリリース
*本研究成果のプレスリリース
*本研究成果のプレスリリース
*科学研究費助成事業データベース
*国立天文台ALMA望遠鏡のホームページ

分子雲衝突による星形成メカニズムの研究
野辺山45m望遠鏡による近傍の大質量星形成候補天体の一酸化炭素分子輝線観測データを使用し、分子雲衝突現象を起源とする星形成メカニズムを調べています。
*国立天文台野辺山宇宙電波観測所のホームページ

集積超伝導分光器によるサブミリ波輝線強度マッピング
南米チリのASTE望遠鏡に超伝導共振器を用いた分光撮像カメラを搭載し、データ科学の手法を導入した観測によって、宇宙最初の20億年における炭素イオンの輝線強度揺らぎを検出・測定する計画です(科研費 特別推進研究・分担により実施)。
*科学研究費助成事業データベース
*広帯域分光装置DESHIMAのホームページ

ミリ波分光によるダークマター検出実験
超軽量なダークマターである「ダークフォトン」をミリ波・サブミリ波帯の超伝導受信機を用いて検出することを目指しています(科研費 基盤研究(A)・分担により実施)。
*科学研究費助成事業データベース

次世代大型サブミリ波望遠鏡(LST)計画
ミリ波・サブミリ波帯において広い視野・広い波長域を一挙に観測することができる50m級の大口径望遠鏡を南米チリに建設し、新たなディスカバリー・スペースを開拓する計画に参画しています。
*LST大型サブミリ波望遠鏡のホームページ

Energetic Particle Chain
太陽を起源とする高エネルギー粒子が磁力線に沿って地球に降り込む現象(EPP)が起きた時に、中層・下層の大気環境がどのような影響を受けるかについて、北極と南極に設置したミリ波ラジオメータを用いて観測的に調べています(科研費 基盤研究(A)・分担により実施)。
*名古屋大学ISEE融合研究のページ
*科学研究費助成事業データベース
*科学研究費助成事業データベース
過去に実施した研究課題
- 東大60cmサーベイ望遠鏡(あまのがわ望遠鏡)用230GHz 2SB受信機システム開発および科学観測(2003~2010年度)
- 大阪府大1.85cm望遠鏡の開発(2003~2008年度)
- ATF(ALMA Test Facility)日本製アンテナ用100GHz/230GHz受信機の開発(2003~2008年度)
- 野辺山45mミリ波受信機用100GHz 2SBシングルビーム受信機(T100)の開発(2007~2012年度)
- 野辺山45mミリ波受信機用100GHz 2SBツービーム受信機(TZ)の開発(2008~2012年度)
- 野辺山45mミリ波受信機用100GHz 2SBマルチビーム受信機(FOREST)の開発(2008~2012年度)
- 名古屋大4mサブミリ望遠鏡(NANTEN2)用マルチビーム受信機(NASCO)の開発(2012~2024年度)
- 名古屋大大気環境計測用ミリ波分光ラジオメータの開発及び運用(2012~2024年度)
- 野辺山レガシープロジェクト「ラインサーベイ(系外銀河)」(2009~2018年度)



